クォーク・核物理研究機構(QNSI)は、2024年7月に東京大学理学系研究科に設置された新しい研究・教育組織です。近代的な原子核物理学は、フェムトメートル(1兆分の1mm)スケールもしくはそれ以下の大きさの量子多体系の物性を研究する学問であるといえます。
陽子や中性子といった核子の多体系としての原子核の研究、物質を構成する究極の粒子であるクォークの多体系研究、そして核子の中の真空に潜むクォーク、反クォークやそれらを結びつけるグルーオンの性質をあぶり出す高エネルギーQCD物理学の研究を系統的に進めていくことを目指しています。
これらの極微の世界の様々な謎に挑戦するためには、それぞれの研究に相応しい道具として、粒子加速器が必要です。日本国内だと理化学研究所のRIビームファクトリー、大強度陽子加速器施設J-PARC、海外では米国ジェファーソン研究所(JLab)、ブルックヘブン研究所で建設計画が進んでいる電子イオン衝突型加速器(EIC)といった最先端加速器施設において国際共同実験を展開し、そこで得られた結果を大型計算機施設、量子コンピューター等を用いた理論と連携することでフェムト量子多体系の謎を解き明かします。
いまは、まだ誕生したばかりの小さな研究機関であるクォーク・核物理研究機構ですが、今後、国内外の研究機関とネットワークを構築し、国際的視点を持った次世代の研究者を育てていきたいと思います。
クォーク・核物理研究機構 機構長
中村 哲